其々の旅路

伯馬(リウハ)のオリジナル小説

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管理人:伯馬もしくはリウハ
サイト名:其々の旅路
アドレス:http://riu89ma.jugem.jp/
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ノーネーム 01-02
01-02
「あれ、そういやここら辺って騎士団第四隊の管轄だったんじゃねぇか?」
 ふとクウが一瞬速度を落とし、ススムに並ぶようにする。移動しながら左手首にある機械で現在位置を確認すると、南十・西五だ。もうそんな場所に来ていたのかと思って周囲を見れば、確かに先ほどよりも城がぐんと近い。
 そして見回した中に、見慣れた軍服を見かけた。クウに視線でそちらを見るように促すと、彼もその方向を見る。先ほど周囲を警備していただろう騎士たちよりも幾分高価そうな軍服の彼を見つけて、ひら、と手を振る。
 その軍服もこちらに気がついていたようで、同じように手を振り替えされた。
「次席も大変だよなぁ」
「第四隊の隊長は負傷してしまったしな」
「あぁ、そうだっけ。じゃああいつ昇進すんの?」
「いや、隊長は一ヶ月ほどで復帰するそうだ」
「ふぅん。まぁイーグルは隊長って柄じゃないよな」
「あぁ、同意する」
 彼らは騎士団員では無いが、騎士団とは無論関係を持っている――というよりは、彼らの立場の方が上になるのだが、彼ら二人にしてみれば立場など関係が無いも同然だった。
 ふっとクウが速度を殺し、建物の隙間へと降りる。ススムも同じようにした。もうそこは城の目の前であり、これ以上建物の上から近づくと幾ら彼らだといえ、城内警備の騎士団に良い印象は与えないのはわかりきった事だ。彼らが建物の上を移動するのは常日頃だが、その理由は単に走り抜けても邪魔にならないからというそれだけである。
「蒼兵、グループ名・天へ導きし者、クウ様、ススム様。お呼びが掛かっております」
 城の正面、警備のために深く広く掘られた堀を渡る唯一の橋の入り口を警備していた騎士に敬礼されつつそう声をかけられ、二人はひらひらと手を振る事で返事とする。こういった伝達の仕方という事は無線で伝える事が出来ない人物からの呼び出しという事で、この場所を警備している騎士にその旨を伝える相手もただ一人だ。
「あれ、控え室ってどこ」
「三階奥、普段は多目的に使われている場所だ」
「あぁあの無駄な空間」
「無駄じゃない。こういった時に使うための部屋だ」
「でも普段空っぽじゃねぇか」
 城内警備をしている騎士には手を振り、その他メイドや執事たちには軽い会釈をしつつ、階段へ向かう。石で出来た階段を上り、二階へ。そこからまた二階の廊下を歩き、丁度反対側にある三階への階段を上る。幾ら城だからといって、この仕組みはややこしい上に面倒臭い。
「天へ導きし者、クウ」
「同じくススム」
「確認しております。武器をこちらへお預け下さい」
 三階奥、彼らが向かっていた部屋の前には三人もの騎士が居た。ここだけ警備しても意味ねぇのになぁと思いつつクウは背負っていた細長い剣を外す。ススムも隣で二本の剣を外して、デスクへと置いた。
 本当は彼らの収納だらけの服の中に、それぞれ二丁ずつ拳銃を所持しているのだが、彼らの立場は騎士団よりも上であるため、見えていない場所を詮索されるわけが無い。、騎士の者たちも彼らが裏切り等をするわけが無いとわかっているからこそだった。
「遅いっつーの、クウもススムも」
「そうか? まぁ急ごうと思えば急げたけど、急ぐ理由は無いだろ」
「まぁな」
 部屋に入るなりクウと同じくらいの背丈の青年が顰め面でそう告げてきたが、クウの言葉にすぐに笑う。別段怒っているわけでもないのだろう彼は、色の薄い茶の髪をがしがしと掻き、あのさぁ、と呟くように言った。
「単独犯って可能性は、」
「高いんだろ。面倒だからその話は後。とりあえず無線代えて」
「調整してないスペアを持ってったのはどこの誰だよ」
 青年はクウから無線を受け取ると、全く同様の別の無線を差し出した。裏のスイッチを幾つか押してからクウはそれを耳につける。そして視線をススムに向ければ、ススムは「あー」と意味の無い、呟きですらない、棒読みの声を出した。
「うん、聞こえる聞こえる。サンキューな、リュウ」
「どういたしまして」
 クウとほぼ変わらない身長に、少し幼い顔つきの彼がリュウだ。受け取った無線機をクウたちと同じ、収納のやたらと多い服に突っ込むように入れた。
 ススムはその様子を見てから、ぐるりと部屋を見回した。普段は何も無い部屋だとクウが言っていたが、今は違う。やたらと豪華な装飾品に大きなテーブル、その上には数十種類の果物が食べやすい大きさに切って並べてある。手をつけた形跡が無いそれにクウが歩み寄ってススムを振り向いた。
「キースが来てからだ」
「えー」
「あ、食えよ。キースはさっき着替えに行ったばっかりだからもう少ししないと戻って来ないぜ」
 ぱしん、とクウの背中を叩いてリュウは言い、自ら果物を一つ手で取って口に運ぶ。小さく歓喜の声を上げたクウも同じように手で取って食べ始めるので、傍にある小皿の意味が無いだろうとススムは苦笑した。いつものことだ。
 クウは四つ目のオレンジを口に運びながら、でもさぁ、と渋い顔をする。がり、と妙な音がした。どうやらそのオレンジに種が入っていたらしい。小皿にその噛んでしまった種をぷっと吐き出して、傍にあった濡れたタオルで手を拭う。
「単独犯じゃなかったらどうするんだよ」
「そこが考えどころだ」
 ススムは腕を組んで壁に凭れた。いつも考え事をする時はこうするので、クウもがしがしと頭を掻く。ススムが考えても答えが出ないことを、クウが思いつくわけもないのだ。
 リュウはといえば、苺を一つ口に入れ、先ほどポケットに突っ込んだ無線を取り出した。部屋の隅に置いてある重そうな箱を開け、なにやら工具を取り出してその無線を弄り始める。
「リュウも考えろよ」
「ススムが思いつかない事を俺やお前が思いつくのかよ」
「……それはまぁ」
「だろ。なぁススム」
「案が無い訳では無いがな」
 相変わらずマイペースなリュウに苦笑して、耳にある無線機を外してリュウに投げる。綺麗な弧を描いたそれをリュウはしっかりと受け止めて、そして自分の耳にもある無線も外してまた弄り始めた。クウの無線は調整が終わったばかりものなので、クウに動作確認を幾つかさせただけで、取り外させはしなかった。
「というより、これしか無いだろうなと思っている。が、確実でもないし堅実でもない」
「前置きはいいよ、さっさと言え」
 クウの言葉に笑みを浮かべるが、それでもすぐには話そうとはせず、結局彼がその案とやらを口にしたのは数分沈黙が続いてからだった。リュウは無線を一つ、調整を終えてしまったようだ。
「行動をするのは、凱旋が始まってからだ」
「……それで?」
「あの位置から狙撃が出来るタイミングはおそらく二分以下だ。その間にあの男がキースを見ているだけならば複数もしくは組織的犯行。キースを狙えば単独犯」
「…………それ以外には無い、か。そのくらいなら俺も思いついたっての」
 そうか、と笑うススムはやたらと楽しそうだ。クウは少し拗ねた様な子供っぽい表情をするが、がしがしとまた頭を掻く。頭脳派では無い彼にとってこの遣り取りは苦痛でしかないのだろう。
 リュウが声もかけずにススムに無線機を投げた。やはり綺麗な弧を描いたそれをススムは右手で受け止め、耳に取り付ける。クウに視線を送るとクウは先ほどススムがしたように、あー、と無意味な声を発した。
「その作戦で行った場合の懸念要素は?」
「複数の犯行の場合、あの男を見張っている最中にキースが何らかの形で攻撃を受ける可能性がある。単独犯だとしても、あの男が私たちに気づいてしまい、狙撃の腕が確かだったら危険だな」
「……キースにはシェイリアがつくんだろ」
「だが大袈裟に護衛が出来る訳でもない」
 んぐぅ、とクウは奇妙な声を出した。リュウはそんな二人には構わず黙々と作業を続けている。お前も考えろって、と言いながらクウは軽くリュウの頭を小突いた。
 と、そこで扉がノックされる。ただノックされたからといって彼らには返事をする気は無く、且つ返事をする前に扉が開いた。
「よぉ」
 現れたのは、ススムよりも背が高い面長の青年だった。やたらと豪華な服を纏い、両脇に騎士を従えている。引きずる様な長いマントは何故か青く、服全体の色も装飾品も青と銀を基調としていた。どこにも赤い色は無い。
「遅ぇよ、キース」
「はは、悪いな。着替えに手間取った。こういう服は趣味じゃない」
 彼が、キースである。正確に言えば、リキースク・ゼン・ロアーナ。この国の王子であり、今日の主役だ。
 両脇の兵士はクウたち三人に敬礼をし、キースにも一礼をして去っていった。扉が閉まるのを確認してから、キースはゆるゆると緩慢な足取りで中央より少し壁にある大きな椅子に腰掛けた。この椅子も、青ばかりだ。
「さぁて、頭の固いどっかの誰かさんたちの為に一応の儀式は行おうか」
 けらけらけらとまるで子供のようにキースは笑って、部屋の隅に居た人物にすっと視線を向ける。今までクウたちが気にもしなかったその人物はキース専属の記録係りの一人。今日はこの部屋を担当している、小柄な女性だ。彼女はぺこりと一礼をして、記録用の道具をさっと取り出して構えた。
 キースはすっと表情を無くし、先ほどとは打って変わって颯爽と立ち上がった。ただ立ち上がるだけなのに彼独特の雰囲気を作ってしまうあたりが、権力者となる者だからなのであろう。
キースは右手をすっと水平に伸ばした。マントがばさりと揺れる。
「蒼兵、グループ名・天へ導きし者」
 呼ばれる前からキースの前に整列していた三人は、そう言われると一様に彼の前に跪いた。右膝をついてかがみ、右手を胸の前にやり、頭を下げる。これは騎士ではなく、蒼兵独特の跪き方である。騎士が跪く場合は、左膝をつき、右手を床につけ、左手を腰の辺りに持ってきたまま、顔をあげるのだ。
「クウ」
「はっ」
「ススム」
「はっ」
「リュウ」
「はっ」
「本日、そなた達に作戦の指導を任ずる。この凱旋を平和に成功させるよう」
 かしこまりました、と三人の声が揃った。それでも尚、彼らは跪いたままだ。この流れも騎士とは違う。騎士の場合、かしこまりましたと返事をしたのち、一度頭を下げ、立ち上がり、一礼をしてまた跪かなければならないのだ。
 かちり、と何かの音がして、そこで漸く三人は顔をあげ、立ち上がる。記録係の彼女がぺこりと頭を下げた。
「面倒臭ぇ……」
「ははっ、仕方ないさな。俺の立場上」
「わぁってるよ」
 キースと乱雑な言葉で会話をしながらクウはひらひらと手を振った。形式的なやり取りを重視する者たちにとってこの儀式は重要なモノなのだ。この儀式を行っていないからと難癖をつけられ、キースと交流が取れなくなっても困る。
「そういえば、シェイリアはどこに行ったんだ」
 ふと気がついたようにススムがそう呟いた。行動を共にしていたクウは知るはずも無く、またススムがそう思っているのもわかっているので彼は反応しない。リュウも知らないらしく、左右に首を振った。キースがあぁ、と呟いたのはその反応の後だ。にやにやと王子らしからぬ笑みを浮かべ、ただ一言、イーグル、とそう言った。
 それだけで通じる自分たちもどうかしている、とクウは思いながらテーブルの上にあるパインにフォークを突き刺して口に運んだ。
「おいこらクウ、パイン食べるんじゃねぇ」
 それに気がついたキースがつかつかと歩み寄ってその手からフォークを奪う。怪訝そうな表情をしたクウは、けれども何か思い出したような表情をした。
「パイン好きなんだっけ」
 王子の癖にと言えば偏見になるのかもしれないが、やたらと酸っぱい食べ物が好きな事を思い出したのだ。おう、と適当な返事をしながらキースもパインを口に運ぶ。
 基本的にこういった場所に置いてある果物などはそれこそ形式的なもので、食べずにそのまま捨てられることがほとんどだ。だがキースの部屋になるとそれは関係なく、部屋を片付ける際にはテーブルに食べ物が残っている事の方が珍しい。今もクウとキースはまるで張り合うようにパインを口に運ぶし、その少し離れた場所ではリュウが小さく切られたメロンを黙々と口に運んでいた。大量生産の難しいメロンを選んで食べるあたりがリュウらしいな、とススムは少し笑って、自分の好物でもある苺を一つ、口に入れた。
 ススムがそれを咀嚼している最中に、ガン! と派手な音を立てて扉が片方開いた。そんな開け方をしてくる者は一人しかおらず、またそんな開け方をしても誰も怒る事が出来ないのだから始末に終えない。
 そこに居たのは銀髪に白髪が混ざった、背の高い男だった。キースよりも若干背が高い。息切れをしているのは走ってきたからなのだろう、その男を振り向いたクウがにんまり笑って、遅ぇよ! と叫んだ。
「悪い悪い、色々と確認に手間取ってな。作戦の説明をしてくれるか」



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